演劇公演で使用する音声エフェクトと、そのプリセットを備忘録します。
演劇公演等のエフェクト事例
音声エフェクトは、クリップに直接適用する方法と、トラックに適用する方法があります。
演劇公演の音声調整をする場合は、トラックに適用する方法を採ることがほとんどです。
理由は、ミスを減らす効果があるからです。編集の過程で、不要な間を取り除いたりするために、クリップを分割して使用する場合が出てきます。この状態でクリップに対して音声エフェクトを適用しますが、その場合、連続するすべてのクリップに同じ音声エフェクトを適用していく反復作業が発生します。また、そのエフェクトの微調整を行った場合、これまた連続するすべてのクリップに(以下略)。不必要な反復作業が発生し、その過程で未適用のクリップがあったり、値が違っていたりというミスが発生するリスクがあります。
そこで、音声トラックにエフェクトを適用する方法を採ることにしたのです。トラックに適用した場合、そのトラックに置かれている音声が再生されると、全てのクリップでエフェクト適用後の音声として出力されます。値の微調整を行った場合、これも該当するトラックに置かれているすべてのクリップの再生時に反映されます。
ステージ手前に単一指向性マイク2本を仕込む場合
某演劇集合公演の事例
県内のとあるホールで行われた演劇公演の音声エフェクト適用例です。編集後、YouTubeにて動画公開することになっていたため、スマホやパソコン、テレビといった様々な媒体で視聴しても問題ないよう、音声レベルなどを考慮して設定しました。
演劇公演の場合、1つのクリップ内に収録される音声ダイナミックレンジが大きいため、臨場感を残しつつも聞き取りやすいレンジに収めることが必要になります。
サブミックストラック
構成
- パラメトリック・イコライザー
- 不要な音域の低減と必要な音域の増幅を行います
リバーブを除去(未使用)- クロマノイズ除去
- 不要な電子ノイズや空調ノイズを除去します
チューブモデルコンプレッサ(未使用)- Multiband Compressor
- 音声レベルを均一化します。音域ごとに別々の圧縮比率を設定し、聞き心地の良い音声にします。
状況にあわせて順番を入れ替えたり、使用するエフェクトのオン/オフを切り替える場合がありました。
以下の詳細説明では、プロジェクトで実際に使用していたエフェクトである、パラメトリック・イコライザーとクロマノイズ除去、Multiband Compressorのパラメーター事例を掲載します。
パラメトリック・イコライザー
- HP(ハイパス・フィルター) 足音や不要な低音ノイズを除去 周波数:70Hz ゲイン:24db/Oct
- L 周波数:737Hz ゲイン:-1.4db Q/幅:急タイプ
- 4 周波数:7835Hz ゲイン:6.5db Q/幅:2
クロマノイズ除去
- フォーカス処理:フラット
- 量:3%
Multiband Compressor
- クロスオーバー
- 低:120Hz
- 中間:2000Hz
- 高:100000Hz
- 出力ゲイン
- ゲイン:16db
- 青コーナー
- しきい値:-42db
- ゲイン:0db
- 比率:2:1
- アタック:10ms
- リリース:100ms
- オレンジコーナー
- しきい値:-28db
- ゲイン:0db
- 比率:3:1
- アタック:10ms
- リリース:100ms
- 緑コーナー
- しきい値:-34db
- ゲイン:0db
- 比率:3:1
- アタック:10ms
- リリース:100ms
- 紫コーナー
- しきい値:-42db
- ゲイン:0db
- 比率:2:1
- アタック:10ms
- リリース:100ms
マスタートラック
構成
- Loudness Radar
- 別名、ラウドネスメーター。全体の音量レベルを確認します。人間の耳で感じる音量感になるべく近づけた計測方法が用いられています(対するピークメーターは、電子的な音量レベルを表します)。
- 音量の過不足が発生する場合、サブミックスに適用したMultiband Compressor の出力ゲインを調整したり、パラメトリック・イコライザーの出力ゲインを調整したりします。
- ハードリミッター
- 拍手などの瞬間的な大音量が発生した場合に、音割れを防いでくれるエフェクト。
Loudness Radar
- ターゲットラウドネス:-16.0LKFS
- YouTubeでは、パソコンやスマホ、テレビといった様々な媒体で視聴することを考慮し、人気YouTuberの音声レベルに近づけつつ音声ダイナミックレンジをある程度残す音量感を探ったところ、この値にたどり着きました。ただし、まだ検証の余地があると思います。
- 余談ですが、テレビの音声はターゲットラウドネス-24LKFSで制作されているようです。
- 余談ですが、CDの音声は-10〜-7LKFSを基準に制作されていることが多かったです。手持ちのCDを自己検証した結果です。
- レーダー速度:4分
- レーダー解像度:6dB/div
- 瞬時値(モメンタリー値):-18.0 LU
- ラウドネス表示単位:LKFS
- ラウドネス企画:BS.1770-3
- ピークインジケーター:-2.0 dBTP
ハードリミッター
- ピークの種類:ピーク
- 最大振幅:-0.1dB
- 入力ブースト:0.0dB
- ルックアヘッドタイム:7ms
- リリースタイム:100ms
- ステレオリンク:ON
客席後方に単一指向性マイクを仕込む場合
詳細内容は後日記入
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